お知らせ・イベント掲示板

  もどる     新規投稿     トピック表示     次の10件     前の10件  

【3394】ads.FM「三重の映画に恋をして」〜VOL.55「きみはいい子」(2015年) 事務局 田中 忍
メール  
URL  

 当委員会会長の田中忍が、ads.FMで三重県ゆかりの映画について話をしています。
コーナータイトルは「三重の映画に恋をして」、略して「みえこい」です。
 第55回目は次のとおりです。本放送は、インターネットでもお聴きいただくことができます。
 ads.FMホームページ http://www.catv-ads.jp/fm/
 ただし、田中会長は電話出演のためインターネットでお聴きいただいた場合、声が
聞き取れません。ご了承ください。

放送日時:1月23日(日)午前11時20分から午前11時36分(予定)まで
放送局:コミュニティFM『ads.FM』
番組名:weekend mix
ナビゲーター:北山ヒロトさん
紹介映画:「きみはいい子」(2015年)呉美保監督
            伊賀市出身の呉美保監督作品です。
       現代が抱える児童虐待、学級崩壊、いじめ、認知症、障がい者問題を
       人間の愛情によって、明日への希望に繋げる感動作品です。


なお、放送内容は、放送後にこのページに掲載します。     
      
修正する
投稿日 2022/1/20 (Thu) 23:40:30
更新日 2022/1/20 (Thu) 23:40:30
 

【3396】Re:ads.FM「三重の映画に恋をして」〜VOL.55「きみはいい子」(2015年) 事務局 田中 忍
メール  
URL  

【放送内容】

呉監督のデビュー作品「酒井家のしあわせ」は、昨年の夏に放送した「みえこい」特別編で紹介しました。伊賀市をメインロケ地として、名張市もロケ地になりました。お話しした内容は三重映画フェスティバル実行委員会のホームページに掲載していますので、関心ある方は、ご覧ください。

今回の「きみはいい子」は北海道の小樽市で撮影されました。が、映画を観ると、三重県でロケがされてもいいのになあと感じました。是非、呉監督には、二度三度と、三重県で映画を撮って欲しいものです。

この映画は、中脇初枝の原作の同名短篇小説から「べっぴんさん」「サンタさんの来ない家」「こんにちは、さようなら」の3編をもとに、現代社会が抱える児童虐待、いじめ、学級崩壊、認知症、障がい者問題などを描いています。これら数本のエピソードが、同時に進行し最後にはひとつの結末になるのだろうかと思い映画を観るのですが、特に、そのようなことはありません。あくまでも、日常生活の中にこれらのエピソードがあるという印象を観る人たちに与えるため、丁寧に、登場人物の気持ちや行動が描かれていきます。

ホームページの「きみはいい子」の予告編では「どこにでもある町の、どこにでもいる人たちの物語」という宣伝をしています。

エピソードをひとつずつ紹介していきます。まずは、児童虐待をテーマとしたものです。尾野真千子扮するお母さんは、マンションで3歳の娘と生活をしています。夫は海外勤務で、仕事の都合でなかなか帰国ができないという状況です。まだ幼い娘は、自分でしたい事がたくさんあって、それをするのですが、この母親から見ると「人に迷惑をかけたり」「言う事を聞かない」ことばかりが目立ち、娘に対し怒りが出てきます。マンションに戻ると、「何故、あんな事をするの!」「いいかげんにしなさい」と娘に強い口調で怒るとともに、テーブルの上にあるテレビのリモコンを投げたり、髪の毛を引っ張ったり、手で娘の頭や体を殴ったりします。娘は「ごめんなさい」と泣き叫んでしまいます。母親の感情が落ち着くと、ふと、「私は何をしているのか」「我が子に暴力をふるうなんて、私はおかしいのではないか」と自己嫌悪に陥り、トイレに閉じこもって泣いてしまいます。娘は、「おかあさん」とトイレにいる母に声をかけ、母と娘は、トイレのドアを隔て、それぞれの場所でまた泣いてしまう。というようなシーンが繰り返されます。

尾野真千子の厳しい顔や表情に。見ているこちらが凍り付いてしまいそうです。
演じている尾野真千子も、この映画を引き受けるかどうか、大変迷ったそうです。でも、「私が断ったら誰がやるんだろう。私は他の人にこの役をやられたくない、演じられたくないというか。そう思って『だったら私が責任もってやります』みたいな感じはありました」というインタビュー記事がありました。難しい役柄ですが、尾野真千子はよくこなしたと思います。そして、このエピソードは虐待を続ける母親が、何故、そうするかを描き、これまで自分をそうさせた心の呪縛から解放させるというシーンも描きます。重いテーマですが、‟救い“があります。この母親を救ってくれるのが、池脇千鶴扮する母親です。池脇は尾野のママ友という設定で登場します。新底、明るく、子どもを叱る時も、怒りではなく、「だめじゃないの」と諭すような言い方をして、さすが二人の子どもを育てている母親だなと、その存在に観る側も安心します。同じく、尾野も池脇には心を許していきます。ネタバレになるので詳しくは言えませんが、尾野が池脇の前で、自分の娘に手を上げそうになった時、池脇が尾野を止めます。このシーンはとても印象的で、観る側には、尾野を救う人物が近くにいるのだという安心が感動になって押し寄せてきます。実は、尾野も、小さいころ自分の親から虐待を受けていて、「自分がこの世にいるから悪いのだ」という切羽詰まった思いをずっとひきずっていました。その理解されない気持ちが今に至っているわけです。

映画は尾野演じる母親が今後どうなるのか、詳細な説明は省かれていて、今後のことは観る側に任されます。ただ、池脇というよき理解者がいることを尾野の中で感じていることは確かで、私は、尾野が演じた母親に、「きみは頑張っている。いい子だよ。」と励ましてあげたく、少しでも、心のゆとりを持って欲しいと期待します。
このエピソードは、原作の「べっぴんさん」がもとになっています。池脇扮する母親が、子どもの頃、近所のおばあちゃんから「べっぴんさん」とほめてもらったことから、そのタイトルが来ています。

続いて、原作の「サンタさんの来ない家」をもとにした学級崩壊やいじめ、及び家庭問題を描いたエピソードに移ります。このエピソードの主役を演じるのが高良健吾です。彼も、いろいろな役柄が演じられる俳優の一人ですが、先生役というのは珍しく、新米教師としての青々しさを上手に演じました。映画では小学校4年生と思われるのですが、その担任をしています。ある日、生徒が教室でお漏らしをしてしまうという事件が起こり、その後、生徒は大騒ぎ、なかなか、その騒動を沈められず、今度は、この生徒の親からは「先生がトイレに行く時間を作ってくれないから」という𠮟責の電話を受けます。その後も、「きもい」という言葉を発しいじめられる生徒の存在や、いつも校庭でポツンといる生徒に話しかけると、「5時まで家には帰ってくるな」と父に言われているとのこと。その生徒は、給食費が長期未納であったりと、高良健吾扮する先生は、非常に疲れてしまいます。

この先生は、あるきっかけで「抱きしめてもらうことの重要性」を知ります。そして、生徒たちに、「家族に抱きしめてもらってきてください」という宿題を出すのです。私、このような宿題を出されたら、どう思うかなと想像しました。ちょっと恥ずかしくて、親に、どのように言えばいいのだろうと考えます。で、この宿題の結果を皆で発表しあうシーンがあって、これがとても納得がいきます。脚本による創作の言葉というより、この生徒を演じた子どもたちに、「家族に抱きしめてもらってきてください」というお願いをして、その感想を語ってもらったのではないかなあと思いました。筋書きのないドラマが現れる、呉監督の上手なテクニックだと思います。高良健吾が扮する先生は、まだ先生になられたばかりで、経験が少ない。だから、生徒への対応や学校の考えなどが、まだわからないという感じを受けます。映画は、この先生が、これまで避けていた行動を起こすため、駆け出すというところで終わっていて、この先生の行動が明るい未来に結びくのではないかという期待に胸が膨らみます。私は、頑張っているこの先生に声援を送りたくなります。これまで紹介してきた人は、悩み、頑張っていこうとしています。いろいろな事情があり、苦しむことになったけど、これからは、過去の自分を解放し、自信を持って、新しい一歩を進んでほしいと思います。

では、「こんにちは、さようなら」をもとにしたエピソードの紹介です。80歳をこえた、あきこは一人住まいです。戦争中のことを思い出すこともあるのですが、少し認知症にかかっています。朝夕、家の前の道を掃除していると、近くの小学生・弘也が、「こんにちは、さようなら」といつも挨拶をしていきます。ある日、あきこはスーパーマーケットでお金を払ったと思い、スーパーを出ると店員に呼び止められということがありました。また別の日、弘也が道端でランドセルをひっくり返し、家の鍵を探していたので、「お母さんが帰ってくるまで、私の家にどうぞ」と弘也を招きました。弘也はおとなしく、家の中で遊んでいます。やがて、母親が訪ねてきて「ご迷惑をおかけしました。この子には障がいがあります」と丁重に謝りますが、あきこは、「障がいなんて、何かの間違いじゃないかしら。この子はいつもきちんと挨拶してくれるのよ。こんなにいい子はいないわ、ずっとお母さんをうらやましく思っていたの。」と母親に伝えると、母親は「息子に手がかかり、謝ってばかりでほめてもらう事なんて今までありませんでした」と泣き崩れます。その後、弘也の授業参観にあきこと母親が出かけ、弘也の成長を見守っているというお話で、ほっこりとします。

あきこを喜多道枝、母親を富田靖子が演じられていました。喜多道枝という女優を、この映画で初めて見たのですが、存在感があり、味わいのある演技をされていました。ネットで調べると、女優と共に声優でも大活躍されていて、本作に出演してもらって、よかったなと思いました。
障がいを持たれている子供の母親の苦労が、あきことの会話で想像できます。実際、母親が苦労しているというシーンは映画の中では、描かれていないのですが、母親が「謝ってばかりでほめてもらう事がなかった」というセリフが印象深く、この一言で、この親子は大変な道のりを歩んできたのだなと思いました。でも、この親子を理解してくれる、あきことの出会いによって、この親子が救われ、以前とは違った明るい生活が、始まっていくように思われます。

この映画は、登場人物の将来について、こうなるという描写は避けて、観る側に任せています。ただし、観る側は、これまでお話したように、以前の登場人物の生活とは異なる新しい生活が始まるという気持ちを持つように、映画は組み立てられています。とても上手な演出だと思います。予告編に、「世界は救えないが、誰かを救うことはきっとできる」という宣伝文句もあり、各エピソードに‟救う“人々が描かれる映画だったのです。

愛情が与えられるから、人間は生きていけるのです。認めてもらえるから、自分に自信がつきます。現代は生きづらさを感じることも多いでしょうが、決して悪いことばかりではありません。他人をほめることで、自分の気持ちも穏やかになります。この映画を観た後、他人のいいところを見つけ、褒めてあげたいなと思いました。そうすることで、いつか自分も褒められると思いました。


修正する
投稿日 2022/1/23 (Sun) 16:45:46
更新日 2022/1/23 (Sun) 16:47:36
 


■【3394】へ返信
名前
E-Mail
題名
URL
削除キー sage機能 ←削除キーは投稿内容を修正/削除する時に必要です

  もどる     新規投稿     トピック表示     次の10件     前の10件  

No.Password

Copyright:(C) 2004 三重映画フェスティバル実行委員会. All Rights Reserved.
Wing Multi BBS Pro 1.1.4