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【3552】「お父さんと伊藤さん」(タナダ ユキ監督、2016年) 田中 忍
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 不思議なタイトルである。34歳の娘(上野樹里)と74歳の父(藤竜也)、そして娘と同棲している54歳の伊藤さん(リリー・フランキー)が、ひとつ屋根の下で暮らすというお話。原作は劇作家でもある中澤日菜子、そして監督はごひいきのタナダユキ、と聞くと、どのような作品ができるのか期待に胸が膨らんだ。

 本作が描く父娘の関係には普遍性がある。妻を亡くした父は、嫁がない娘の将来を心配する。もう立派な大人で生活力もある娘だが、大丈夫かと思う。理由あって息子の家を出なければならず、娘を頼る父なのだが、娘の住処には何と20歳も年上の中年・伊藤が同棲していた。開いた口がふさがらない。これが現代なのかと目の前にある現実を受け入れようと努める父であった。

 この父は40年も教員をした男で、話し方が感情的にはならず、諭している。たとえば、「ちょっと考えが足りないんじゃないのかな」しかし「スプーンなんてねぶるんじゃないよ。悪い癖だ。ちっとも直っとらん」と娘を叱る。

 娘は、娘で父の心配をしている。父に対して優しい言葉をかけるのだが、父は「わかっていることを言うな。わかっていてもできないことはできないのだ」みたいに反発され、相変わらず頑固な性格だと、自分を抑えることで精いっぱいだ。

 また一方では、父は娘に迷惑をかけてはいけないと思っているし、娘は娘の道を進むべきだと思っている。

 父と娘の気持ちのやりとりは、根っこのところで強い結びつきがあるが、他人と話すときのように距離感が保つことがない場合が多い。父は、娘も自分と同じ気持ちで同じ行動をするはずだと思うから、反対の発言や行動を娘にされると、「ええ?」と驚いて感情的になってしまう。叱ったり怒った後で、いけないと反省するのに声に出して謝ろうとしない。その繰り返しが日常の中で続き、娘も出口が見つけられないまま、時は過ぎていく。

 ・・・と書いていると、私が自分の娘に伝えねばならないことを、映画が代弁しているような気がしてきた。このように思うのは、私だけか?娘を持つ同世代のおやじたち、ほとんどではないだろうか。

 タナダの演出は、非常に淡々として、特別に何かが起きるようなことはない。しかし終始飽きさせない吸引力があるのは、この映画が普遍性を持っているからである。

 この映画は世代によって、感動する部分が異なるかもしれない。若い人は娘の視線で、50代〜60代の人は父親の視点で見るだろう。今はそれでいいが、若い世代も40年たってこの作品を見た時、私のような気持になっているのだろうか。今、59歳の私はそれを確認するまで生きながらえる約束が、ちとしにくい(笑)。

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投稿日 2017/11/29 (Wed) 22:48:09
更新日 2017/11/29 (Wed) 22:55:41
 


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