TOP>三重映画さんぽ>横山智佐子さん講演会「ハリウッドからのメッセージ 2012」 ライター:中村真由美
*6月17日(日)に開催された横山智佐子さんのイベントの模様を、三重県で活躍するライターの中村真由美さんに執筆いただきました

 6月17日(日)、津市市民活動センターの会議室は、映画のみならず横山さん自身を慕う人々で満席となりました。終始和やかな雰囲気の中、横山さんの講演に続いてISMP生徒による作品上映、質疑応答が行われました。

「徹底した分業制」
 長年、フィルムエディターとして米ハリウッド映画業界の第一線で活躍する横山さん。大きな特徴としてまず挙げたのが、徹底した分業制です。制作担当者は、一般的にビジュアル・オーディオ・文学の3つに分かれますが、ハリウッドではさらに細分化。ビジュアル分野は、プロダクションデザイン・アート・カメラに、またオ―ディオ分野は、サウンドミキサー・サウンドデザイン・ミュージックに分業化され、それぞれに多くの人々が携わります。しかもたとえば映画ミュージックを専門に勉強する人がいるなど、日本とは随分状況が異なることを教えてくれました。

 文学的な分野には脚本と編集がありますが、もともとハリウッドには"脚本がそのまま映画になる"という発想がないのだとか。映像時間の10倍以上もの撮影をし、それを編集者はすべて見て、選択する作業を何度も繰り返すのだそうです。編集を意識しながら撮影する日本とは大きな違いといえるでしょう。

 さらに違う点といえば、完成前の作品を観客に見てもらうオーディエンスプレビユーがあること。アンケートの採点結果がその後を左右し、ポスターが完成していても点数が低いために延期という場合もあるそうです。

「オーケストラシステム」
 日本の映画制作との相違点について、監督とクルー(プロダクションデザインナー・カメラマン・エディターなど)との関係性についても教えてくれました。ハリウッドでは、監督の下にクルーがいるという上下関係ではなく、クルーたちとは対等で、いわばオーケストラの指揮者のような立場。エディターの権限も非常に強く、エディターの力量で作品が大きく変わることもあるのです。

「顧客重視=商業性重視」
 ハリウッド映画のもう一つの大きな特徴として欠かせないのは、顧客重視。すなわち、商業性重視ともいえます。顧客の反応を知るための手段として、オーディエンスプレビューがあり、その結果をフィードバックして編集して、またプレビュー…。映画によってはこれを5回も実施する場合もあるとか。クオリティーが高いものがいい映画とは限らない、つまり顧客に受け入れられるとは限らないのが映画の難しいところと話す横山さん。これを的確に表現したジョン・フォード監督の言葉を紹介してくれました。

 「我々フィルムメーカーにとって芸術的失敗はそれほどたいしたことではない。しかし、商業的失敗は許されることではない。商業的に成功する作品を作り出し、なおかつそこに芸術的な要素が表現できれば、フィルムメーカ―として成功だったと言えよう。」

「顧客の心に訴えることができる何か→感情」
 こうしてハリウッドの制作現場を長年見続けてきた横山さんが、日本の若者たちにも知ってもらい、日本映画業界に貢献したいとの思いから開校したのが、ISMP。これを後押ししたのは、デジタルカメラの普及です。20年前までは1作品を完成させるのに7,000ドルかかり、何度も練習できない状況でした。ところがデジタルカメラのおかげで安く制作できるようになったのです。実際ISMPでも1年コースの間に3から4作品を制作。生徒たちは何度も経験するうちに、フィルム作りを学んでいくのだといいます。

 最後に横山さんは、"これ、いい映画じゃん"といわれるのは、"感情"を引き出すものだと教えてくれました。それには、映像・音楽・脚本などすべての要素が揃っていないといけません。そのためにも経験と勘が必要不可欠。何度も何度も作り、経験を重ねることで学びとってほしいと、フィルムメーカーを目指す若者たちへ、熱いエールが送られました。

 横山さんの講演に続いて上映されたISMP生徒の作品は以下の3作品。いずれも個性的で見ごたえがありました。

「Silent Love」
 ISMP8期卒業生 長尾聖子監督 2011年

「Deep Fog」
 ISMP8期卒業生 矢野耕法監督 2011年

「The 7th Song」
 ISMP9期卒業生 大坪大介監督 2011年



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