TOP>三重映画さんぽ>(特別執筆)舞台「銀の鈴」三重公演近づく!! 田中 忍
齋藤勝監督(右)  いつだったろう。齋藤勝監督から「津で舞台『銀の鈴』をやるので、体育館のようにだだっ広い所はないか?」と相談されたのは・・・。
 数ヶ所案内して、監督に気に入ってもらったのが、津センターパレスB1の「市民オープンステージ」だった。かつてはスーパーマーケットが入居していた場所で、1m四方のコンクリートの支柱が間隔をおいて立っている。だだっ広いには違いないがその支柱が観客の視線を邪魔し、「演劇の舞台としては不適切ではないか」と思っていたところ、「田中さん、市民オープンステージに決めました」という連絡が入りビックリ!!監督は「この場所は面白い。是非、これまで皆さんが見たことのない舞台をお見せする」と自信満々の表情だった。

 本年5月20日から大阪公演がスタート。僕は翌21日に大阪へお邪魔した。会場となった「細野ビルヂング」に唖然とした。昭和11年に立てられたという洋風建築で、レトロ調な雰囲気が今も残っており大変味わいがあるのだが、絵や写真の展示場にふさわしいスペースで、この場所も「演劇の舞台としては不適切ではないか」と思ってしまった。開演が午後3時、まだ外は太陽がしっかりと顔を出し、カーテンは引かれているものの窓の向こうは明るい。また満員の観客席と隣接する舞台は数歩も歩けば観客にぶつかる程狭く、その背景には本作とは関係のない書棚やドアがむき出しになっている。おまけにこのビルは往来の多い道に面し、自動車が行き交う音や雑踏が耳に飛び込んでくる。「こんなスペースしか借りられなかったのだろうか」と疑問に思ってしまった。

 しかし上演が開始されると、目に映るのは役者のみだったし、耳にするのは役者のセリフのみになるほど、舞台に集中できた。監督は「今回の劇を演じる場所は、生音やパトカーのサイレンが聞こえても成立するように作っています。最初は屋外ステージでやろうかと考えていた時期もありました。内容によっては外と完全に遮断されている劇場やホールでやるのがいいものもあるけれど、これは荒い環境で演じるのが適切ではないかと考えています。また、この狭い場所で芝居をしようと思ったのは、観客に近い状況で役者を感じてもらい、同じ目線になって欲しかったからです」と語った。

 「銀の鈴」の舞台は11年前に初演以降、今回で4度目になる。また昨年は映画化もしている。作品ごとに内容を変えており、「今回の作品は自分が創造したい『銀の鈴』に最も近い」と監督は語る。物語は昭和19年8月に沖縄を出発し撃沈された疎開船「対馬丸」事件を基にしており1,422名(そのうち学童738名)が犠牲となった。その船で疎開するよう進めた渡瀬という男性が記憶を辿るという物語である。戦争により引き裂かれていく人と人の愛が大変悲しく、美しい思い出だけが残っている。疎開を進め犠牲に遭わせてしまった自責から抜け出せず、残された者の苦悩が浮び上がる。監督が意図するように、役者が近くで芝居をするため、目の前で演じられていることが現実味を帯びている。芝居に必要なセットは観客が想像することで事が足り、観客は役者らと同じ境遇となり、いつのまにか心を交わしている・・・。三重県出身の2名の子役、門山葉子、西口綺更(三重アクターズ養成所)は大変重要な役を演じており、本作品に出演できたことを誇りに思うだろう。

 舞台は見るたびに発見がある。三重県公演では、中央に舞台が置かれ観客が周囲を囲む。僕が「不適切」と感じたこのスペースをどのように使い、役者に芝居をさせるのか、本番が近づくにつれ期待が膨らんでいる。

舞台「銀の鈴」大阪公演から

◇ 『銀の鈴』三重県津市公演
1.開催日時
平成23年6月4日(土)   15:00、19:00
5日(日)   14:00
2.会  場 津市まん中交流館 津センターパレスB1「市民オープンステージ」
 津市大門7−15
3.料  金 前売:2,500円 当日:3,000円 割引:2,000円
*割引は65歳以上・高校生以下・ハンディキャップのある方*
4.主  催 劇団ARK
5.問合わせ 劇団ARK TEL:072-883-7941
劇団ARK代表 齋藤 勝 TEL:090-8823-9646
http://www.arknets.com/



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