TOP>三重映画さんぽ>〜シリーズ伊賀〜その3「城」〜 木村 直史
 「生活感」という言葉を聞いたとき、みなさんは何を連想するでしょうか。日常の生活風景、家族・友人やご近所との暮らし、四季折々の食卓、何気ない話し言葉など、身の回り全てが当てはまると言えます。そんな中で外せないもの、それは“街”ではないでしょうか。自分達が暮らしている街並みがあってこそ、そこに様々な生活が息づいて、広がっていくように思います。

呉監督にいただいたサイン  「オカンの嫁入り(2010年)」を観始めた冒頭、ふとそんなことが頭をよぎりました。本作は、関西のとある街で暮らす母1人娘1人の家族を主人公に、母が突然年下のイケメンと結婚する!と言い出した騒動に始まるコミカルで、それでいてしんみりと繰り広げられる、それぞれを思いやる心の動きを描いた物語です。母・大竹しのぶ、娘・宮崎あおいが掛け合う芝居もさることながら、昔ながらの街並みの中で暮らす人々の生活風景が実にていねいに描かれていて、非常に見応えがある作品でした。そして物語が進むにつれ、不思議な感覚を感じました。映画の中に登場する街並みがどこか懐かしく、すぐ身近にあったように思えてきたのです。

 本作の監督は、伊賀市出身の女性監督・呉美保さん。長編デビュー作「酒井家のしあわせ(2006年)」に続いて、2本目の映画です。2010年9月の全国公開から2ヶ月遅れになりましたが、地元の映画館・ジストシネマ伊賀上野でも公開されることになり、その公開初日である11月13日に、呉監督を招いて舞台挨拶とミニトークが開催されました。「酒井家のしあわせ」では、伊賀市内で大々的にロケが行われましたが、今回は主に大阪・京都の下町にて撮影されたようです。いくつかの撮影秘話と共に、登場人物たちの生活風景をいかにして作り上げるか、小物ひとつ、言葉ひとつに対するこだわりがじっくりと語られました。

 その話を聞いてピンときました!懐かしく思えたのは、登場する街並みが伊賀街の生活風景に見えたからであり、呉監督の生活感、つまり伊賀市で育ち暮らしてきた思い出そのものが、作品の中に強くにじみ出ていたからなのです。呉監督は、ふるさとへの思いを作品に込めることで、登場人物たちが暮らす街の生活感を、強くより深いものにしていたように思いました。映画は全て撮る者の思いが形になる・・・これも映像作品ならではの表現方法であり、“映画の中に思い出とふるさとをみる”という見方も、楽しみ方のひとつなのだと、改めて思ったのでした。
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