TOP>三重映画さんぽ>「映像翻訳の仕事」 荒木 小織
 吹替・字幕翻訳者の荒木小織と申します。当初は、日本語版制作の東北新社という会社で8年ほど翻訳をやり、その後フリーになって13年、年数だけはベテランの域に達してしまいましたが、未だ修行の毎日です。(謙遜ではなく《笑》。)そして8年前にどういうわけかアメリカ人と結婚しアメリカに移住、以降もメールやFedExを駆使して《笑》、日本の制作会社さんとお仕事をさせていただいています。

 この仕事を目指した理由は、やはり洋画や海外ドラマが好きだったから。私は三重県の小さな町の出身で、町には映画館もありません。子供の頃、テレビで洋画や海外ドラマを見るのが大好きでした。母が洋画好きだったので、その影響が大きいかと。なんとか東北新社さんに入ったあとも、すんなり翻訳者になれたわけではなく紆余曲折あったのですが、与えられた仕事をしっかりやりつつ「翻訳がやりたいんですけど…。」とおずおず、しつこく言い続けていたところ《笑》、念願叶って翻訳の仕事が出来るようになりました。

 映像翻訳が本の翻訳と違うのは、「原文のまま訳してはいけない」ところ。原文のニュアンスを最大限に生かしつつ、日本語の話し言葉として違和感のないよう訳さなければなりません。英語には、日本人にはピンと来ない比喩などがたくさんあります。本の場合は何度も読み返すことが出来るので大丈夫なのですが、映画やドラマは台詞が一瞬で過ぎ去るため、「え?今のどういう意味?」と思わせるのは厳禁。日本語の表現として違和感のないように、しかもニュアンスを壊さないように伝えるのが苦労であり楽しい部分です。そして同じく重要なのが、登場人物のキャラクターを的確に表現すること。まずは英語の“I”をどう訳すかがキャラ設定の第一歩です。男性なら「僕」か「俺」か「わし」か「私」か、女性なら「私」か「わたくし」か「アタシ」か。バリエーションはまだまだあります。私は吹替の仕事が多いのですが、技術的にはまず、日本語の台詞の長さを英語の台詞の長さに合わせなければなりません。さらには口の形を合わせ、俳優のアクションに合わせ、表情に合わせ、そしてキャラに合わせと、いろんな制約がある中で台詞を作ります。それが声優さんの演技と相まってピッタリとはまった時には、最高の気分。作品の内容をきちんと伝え、見る方達に楽しんでいただけるよう、スタッフ全員で作品を創り上げていくという喜びがあります。

 現在はアメリカに住んでいるため、その現場であるアフレコに滅多に行けないのがかなり寂しいのですが、それでもこの仕事を続けていられるのは本当に有り難いことです。インターネットがなかったら不可能でした。クライアントとのやりとりや納品は全部メールですし、今では翻訳に使う映像もネット経由で見られたりします。

 毎回違う作品に出会えるこの仕事、いつまでも飽きることはありません。これからも悪戦苦闘しつつ、感動を伝えるお手伝いをしていければと思っています。

「映像翻訳の仕事」
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