TOP>三重映画さんぽ>「ISMPと歩んで」 横山 智佐子
*横山智佐子さんは、映画「GOEMON」(紀里谷和明監督)や「アメリカンギャングスター」(リドリー・スコット監督)等の編集に携わり、今もハリウッドで活躍する三重県津市出身者です。

 映画を学びたくてアメリカに来てから23年、ハリウッドで映画の仕事をするようになってから19年になる。人に比べて特別な事をしているとは感じた事はなかったが、日本の雑誌やテレビのインタビュー等を受けるようになり、次第に自分の立っている位置が見えて来た様な気がする。確かに映画業界で仕事をする日本人は稀であったし、ハリウッドでもレベルの高いプロダクションで、才能のあるフィルムメーカーたちと仕事をして来られたことは、運がよかったとしか言いようがない。

 自分の特別な位置が見えて来た時感じ始めたのは「責任」である。誰もができない事をやってきた自分だからこそ知っている知識。それを自分の中だけに納めてしまってはいけないのではないか?そういった知識を望んでいる人、そして次の世代の人々に伝えて行かなければならないのではないか?自分の場所が特別であればあるほど、責任の重さは大きいと感じはじめた。

2006年9月に映画学校インターナショナル・スクール・オブ・モーション・ピクチャーズ(ISMP)をスタートさせた。ハリウッド映画がどのような過程で出来上がるかを日本の若者に伝える、それが第一の目標であった。映画学校はアメリカにも多々あるが、そことの違いは日本語で授業を受けられるということ、そして実際に自分で映画を作る事に重点を置いているという点だ。実践重視のカリキュラムは、学校経営としてプラクティカルではなく他校では見る事はできない。しかし生徒各自のメリットを考えると、そうでなくてはならないと信じていた。

 以来同じ方針で突っ走ること3年半。先週弟7期生の卒業式上映会を行い、来週からは第8期生の授業がスタートする。当校では人前で話すのが得意でない人も、気の小さいはずかしがりやでも、全員が監督となり「アクション!」と叫んで撮影を行う。脚本を書いたり編集を行った経験のない人でも、睡眠時間を削って本を書き上げ、作品を仕上げる。ものを作り上げる事の充実感。しかもそれが大好きな映画であれば達成感や満足度も大きい。寝る間も惜しんで製作に取り組む生徒たちを見れば、それは一目瞭然だ。

 そして上映会で「おもしろかったよ」と言ってくれる観客に、誇らしげに笑ってみせる彼ら。私の満足感はそんな彼らの表情で満たされる。「おもしろかったです」「濃厚な授業内容でした」「忙しいけど充実してました」。生徒のそんな言葉を聞くのが嬉しくて、来期はもっとおもしろい内容を提供しようと気合いが入る。一方ISMPで培った絆は卒業後も深まり、今では学校行事や撮影は卒業生の参加無しでは考えられないほどになった。今その卒業生を中心に長編映画を制作する計画も進んでいる。ISMPの生徒に囲まれた生活。ハリウッドで映画の仕事に携われた以上に、幸運だと感じる日々を今送っている。

ISMP7期生撮影風景
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